Designeast05 Camp in Hamamatsu

「デザインする状況をデザインする」を移動しながら考えるシンポジウム・ワークショップの開催

DESIGNEAST05 CAMP in Hamamatsu -SURVIVAL-

2014年7月5-6日、DESIGNEAST05は静岡県浜松市の市街区中心部にある立体駐車場、万年橋パークビル7・8Fにて開催された。共催:DESIGNEAST浜松実行委員会~三人の鈴木とゆかいな仲間たち~、協賛:浜松クリエーターズネットワーク会議実行委員会など、浜松市内で活動する様々な人々によって立体駐車場をキャンプ場に読み替え、様々なコンテンツを展開した。ところで、今年度のDESIGNEASTのテーマにCAMPを選び、大阪から旅にでたのは理由がある。その背景について、まず書いておこう。

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場(コンテナ)ありきで内容(コンテンツ)を考えると、「場所を満たすために何ができるか」といった収束させる発想に陥りがちだ。しかし、逆に内容ありきで場を考える事は適合する方法自体を問い直し、「内容を満たすために何ができるか」といった拡散させる発想へ繋がる。過去4年間、DESIGNEASTは大阪・名村造船所跡地にあるCreative Center Osakaで開催されてきた。20x60mの4階建ての船舶設計施設をフルに活用すべくこれまで様々なコンテンツを創出してきた。

だが、こうしてコンテンツに満ちたコンテナを更新しつづけることだけが我々の目指すべき活動ではない。多様な人材が流動化し、新たな場での出会いや学びが創発を起こすためにはコンテンツと場をつなぐ文脈(コンテクスト)が必要だ。C・アレグザンダーは形とコンテクストの不適合さを取り除くために「パターンランゲージ」を用いたが、私たちはコンテンツとコンテナを合致させるコンテクストを「CAMP」に委ねることにした。

人間は古来から交易・交流を通して文化を発達させてきたが、今日では情報環境の発達によって人は物理的に移動せずとも交流は可能になった。地元の人からすればほんの一時的な滞在者、おせっかいな他者であるかもしれないが、それでも私たちは旅し、文字通り「膝を割って話す」ことにした。DESIGNEASTは2,500人のコミュニティである。DESIGNEASTの多様性が誘発する創発を高めることが思いもつかない創造的な活動を創出し、それが結果として私たちの生活の質を高めることに繋がるはずだ。実際、DESIGNEASTで出会った人々が協働し始めた話も、ちらほら聞くようになった。

だからこそ大阪だけに留まっていてはいけない。大阪で培ったコミュニティと共に大阪から旅に出て、新しい状況を耕そうと私たちは決めた。旅にでるには支度が必要だが、旅先にあるものを最大限利活用することで最小限の持ち物だけに留めた。個別・固有の場の特性を知らずにCAMPを私たちだけで設営するのは無理なので、旅先の仲間を募り、日本各地の素敵なCAMP場に赴くに至った。

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そうして私たちが浜松市内、万年橋立体駐車場でCAMPをすることになったのは、DESIGNEAST浜松実行委員会の中の植野さんが大学院の時に立体駐車場の転用可能性を研究していたことにその端を発する。そして、マテリアルの流動を謳う403 architecture [dajiba] の辻さんを中心に、浜松市内外の若手デザイン・建築・美術作家らと共にDESIGNEAST05 CAMP in Hamamatsu は開催することができた。ありがとうございます。

さて、DESIGNEAST05 CAMP in Hamamatsu -Survival-ではトークイベント、ワークショップ、バーベキュー、テント設営など様々なコンテンツが全て立体駐車場内で展開された。Survivalというサブテーマが設けられているのは、場の創造的転用によって「都市が生き延びる」ことのみならず、防災時に拠点としても機能しうる「立体駐車場で生き延びる」ことを社会実験としても検討する、という目的があった点も指摘しておきたい。転用によって駐車場は非常に豊かな空間となったが、特に駐車場特有のスロープを利活用したシンポジウム会場は気持ちよい空間として機能していた。

浜松市街地を借景しつつ夜中まで展開されたメインセッションでは、生き延びるための表現・編集と2つの絡み合うテーマによって展開された。編集的創造/創造的編集としてのデザインとは市民連携や産業創出など、様々な社会的接点の作り方である。数ある星から星座をつくるように、数あるアクターからデザインを立ち上げるための視点、方法、成果物など多様な議論がなされた。「できあい」から「つくりかけ」へ、デザインする/される主体が分ち難くなるように、あるいは生活における「つかう」ー「つくる」が曖昧なように、デザインにおける主体は「生活者」へと変容しつつある昨今の状況がここでも立ち現れてきたように思われる。そして、話足りないゲストや来場者は、例のごとくセッション終了後も遅くまで酒を呑み交わしたのだった。

翌日は、早朝から町を歩き、おいしい朝食をnaru蕎麦で頂き、最後に会場に戻ってCAMP in Kyoto引き継ぎ式を行った。次はDESIGNEAST京都実行委員会RADとのコラボレーションで、京都の山奥だけれども左京区・大見に赴く。次なる場の楽しみ方を考えつつ、まずは浜松での余韻を噛み締めたい。


2014年7月6日 帰り道の新幹線にて

水野 大二郎


Designeast05 Camp in Hamamatsu

Mobile symposiums and workshops to discuss the situations surrounding design



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